24年自民党総裁選について

時事・雑記

アメリカ大統領選挙に比べるとホントしょーもない中身の自民党総裁選ですが、いちおう概要と見立てを書いておきましょう。

現時点(9/1)では最終的な立候補者の数すら確定していません。公式に立候補表明をしているのは小林鷹之、石破茂、河野太郎の3名だけ。

おそらく9/7までには小泉進次郎、林芳正、茂木敏充、高市早苗あたりが公式出馬すると思います。

野田、上川、斎藤、加藤の4名については推薦人20名が集めきらずに出馬断念になるのではないでしょうか。最終的には候補者6~8名で1回目の投票を争うことになるでしょう。

前回までと違って立候補者が次々に出てくる背景としては、裏金問題を経て各派閥が解散されたために、派閥単位での候補者1本化や支持締め付けが効かず、党内情勢がきわめて流動化しているのでしょう。「余計な出馬を控えろ」という上部(派閥領袖)からの締め付けが今回は皆無なのだと思います。

1回目の投票では決まらない

自民党総裁選のシステムは、1回目の投票には全国の自民党員による投票が加味されます。しかし、1回目の投票で過半数に達する候補がいなければ、1位と2位によって決選投票となります。

この2回目の選挙には党員票はほぼ無関係です。国会議員による内輪の選挙となります。つまり、結局は国会議員の派閥の論理・党内力学によって、議員の支持を多く取り付けた候補が勝ちます。

前回の総裁選はまさにこの流れになりました。第1回の投票では岸田256:河野255だったが、第2回投票では岸田257:河野170となり、党員票による1位・2位が逆転しました。

おそらく、前回よりも立候補者数が多いこともあって、1回目の投票で1人だけが過半数を取ることは難しいでしょう。必ず1位と2位による決選投票になります。

誰が1位と2位になるのか?この組み合わせ次第によっては最後の結果まで見通せます。私の予想ですが1位:小泉進次郎はほぼ確定だろうと思います。しかし2位の予想が難しい。ちなみに党員党友票での候補別支持率は以下のようになっているそうです。

全体のデータは意味がありません。実際に投票権を持っているのは自民党員ですから右列が重要です。

党員票だけを見れば、進次郎が22%で1位、石破が20%で2位、高市が14%で3位です。

じゃあ石破がそのまま2位になるのか?と思いきや、自民党内では石破は「かなりの嫌われっ子」でほとんど議員の支持は集まらないでしょう。となれば、高市早苗、河野太郎、小林鷹之の3名のうちの誰かが2位になる可能性が高いと思います。

1位:2位の考えうる組み合わせとしては、①小泉:石破、②小泉:高市、③小泉:河野、④小泉:小林4通りが可能性が高いと想定できます。

24年 自民党総裁選ダービーを作ってみたら面白いかも。単勝オッズ1位はコイズミシンジローでしょうか。

このうちパターン①と③になり、石破か河野が2位になれば、この2人は党内での議員支持が少ないため(石破嫌い、河野嫌いが非常に多い)圧倒的に進次郎が有利となります。進次郎総理が確定します。私はこのパターンになる可能性は低いと思っています。とうのも、石破・河野は今回さほど支持が広がらないでしょう。

【自民党総裁選】石破茂「裏切り」が止まらない!【デイリーWiLL】
石破茂に対しては永田町の国会議員内でもイメージが悪く、いわゆるネット右翼の人々からも受けが悪いのが実際のところです

②か④のパターンになった場合はまったく読めません。

高市早苗と小林鷹之はどちらもタカ派のため一定数の議員支持(旧安倍派を中心に)が集まるでしょう。きわめて接戦となります。

もし麻生派・岸田派・茂木派あたりが一致して、若手の小林鷹之支持(反菅陣営)に回れば、大穴のコバホーク総理誕生もありえます。1着:コイズミシンジロー、2着:タカイチサナエ となる展開が、個人的には一番面白くなりそうですが、そんな競馬ダービーみたいなことばかり言っていてもしょうがありません。

菅が勝つか、麻生が勝つか(長老支配の構図)

今回の総裁選を背後で仕組んでいるのは、明らかに長老の菅義偉元総理麻生太郎副総裁です。この2人の権力闘争が背景にあり、どちらがキングメーカーとしての院政権力を握るかでバチバチの代理戦争をしているのが、今回の総裁選の実態です。

前回の総裁選では、河野太郎を推した菅グループが負けて、岸田を推した麻生派・岸田派・茂木派の3つが主流派となり、特に麻生太郎が副総裁として君臨して岸田の後ろ盾となったため絶大な権力を握りました。菅グループは冷や飯を食って3年間は非主流派に甘んじてきました。

今回は菅義偉が逆襲を仕掛ける総裁選であり、麻生太郎の副総裁任期がもうすぐ切れることもあって麻生太郎(83才)がこの秋にも政界引退するのでは?との噂も出てきています。

菅義偉が推している本命馬が小泉進次郎であり、他にも石破、河野のカードに乗り換えることも可能です。菅のほうが手持ちのカードが多く、一方の麻生には、麻生派所属の河野以外には、茂木、上川ぐらいしか今回は持ち札がありません。

おそらく、小泉進次郎が総理になれば麻生派が凋落して、菅グループが実権を握ることになります。その意味では、自民党内の主流派と反主流派が入れ替わるという党内力学の変化が起きます。

しかし、決選投票において麻生派・岸田派・茂木派の3派閥(合計130人)が団結して、進次郎以外の2位候補を一致して推せば結果がどうなるかまだ読めません。

もともと麻生派と岸田派は「宏池会」という同じ旧派閥出身者の集まりであり、麻生太郎は「大宏池会の再結成」を目標に掲げてきました。決選投票でここがどう動くかによっては結果が大きく左右されるでしょう。

今回の総裁選は、1回目と2回目の投票結果を見れば、旧派閥が解体された後、今後どのような政策グループが再構築されていくのか?を占う選挙にもなりそうです。どの候補にどのぐらいの議員票が集まるのかを見れば、新しい党内力学の離散集合(派閥の再編成・シャッフル)が見えてくるでしょう。

麻生太郎と菅義偉の政治信条の違い

ちなみに、麻生太郎と菅義偉の政治思想や支持政策の違い・対立軸は何なのでしょうか?①安全保障、②官僚との距離感(行政改革)、③派閥解体 の3点から違いを見てみましょう。

①安全保障面については実のところ、麻生も菅もほとんど違いはありません。タカ派で日米同盟を重視して反中国という姿勢は共通しています。

今まで媚中派の権化と言われていた二階俊博(85才)が政界引退します。政権内部への影響力は無くなっていきます。

ちなみに、自民党で最も親中国(媚中とも呼ばれる)のハト派と言われる最左翼サイドにいるのが岸田派です。その典型は林芳正でしょう。

さらに、田中角栄が日中国交正常化を推進したという歴史的経緯から旧田中派(平成研)の流れを汲む「茂木派」親中派傾向が著しいと言われます。

次の重要な違いは②「官僚機構との距離感」(行政改革推進派がどうか)です。ここが明確に違います。

麻生太郎は、財務省官僚との癒着が深く、財務省の息が掛かった議員です。財務省が説く「偽りの財政再建論」を支持し、そのための「増税を容認する」という姿勢です。岸田も全く同じでした。

それに対して、菅義偉は「官僚嫌い」で官僚機構(霞が関)を信用していません。官僚依存ではなく官邸主導という姿勢です。小泉元総理の郵政民営化や、中曽根元総理の国鉄・NTT・JT民営化といった「行政改革」を推進していく立場を汲むのが菅グループです。

③の「派閥解体」については、麻生は派閥存続論なのに対して、菅は以前から派閥解消論者です。

というわけで、トータルで見るならば、同じような長老支配政治が続くとしても、麻生が権力を握って院政を行うよりも、菅が実権を握るほうがまだマシだろうと思います。

河野太郎・石破茂は「捨て石」でしかなかった

前回の「小石河連合」は完全に分解され、今回は石破や河野を菅義偉は積極的に推すつもりが無い様子です。石破と河野をすでに見限っていると言うべきでしょうか。

石破はどの派閥からも嫌われる「嫌われっ子」であり、たとえ2位に滑り込んだとしても決選投票で勝つ見込みはゼロです。

そもそもこの人は政治家として何がしたいんでしょうか?コロコロと態度を変えて一貫性がある人物では無いのですが、党内野党みたいに「批判する姿勢」が受けて世間受けが良いだけなのだろうと思います。(この点で単なる人気取りで政策ポリシーが無い小池百合子に似ています)

次に、河野太郎ですがここ数年で明らかにボロが次々と出てきました。世論の支持も急速に離れています。マイナンバーカード問題で何の責任も取らず、マイナ保険証を強硬突破し、最近では中国系の環境企業との癒着すら指摘されています。

【中国とエネルギー問題】河野太郎議員が内閣府のタスクフォースで再エネを推し進めた本当の理由を青山繁晴さんが話してくれました(虎ノ門ニュース切り抜き)

親中派の姿勢がバレたことで、保守派の議員には支持が広がらないでしょう。所属する麻生派40~50人の支持が河野支持で一致して纏まるとは思えません。おそらく麻生派は大きく票が割れるでしょう。麻生派内の甘利グループは小林鷹之もしくは高市早苗あたりを支持するでしょう。

究極の「捨て駒」となる小泉進次郎

このまま菅義偉の仕掛け戦がうまくいけば、大本命の小泉進次郎が総理になる可能性がきわめて高いでしょう。ただし、進次郎に総理としての資質があるかどうかは別問題です。

命式分析については立候補者が全員出揃った後にまた書きたいと思っていますが、進次郎の命式ははっきり言って岸田総理と大差ありません。

おそらく、菅義偉からすれば、小泉進次郎は「自民党が下野して政権交代が起こる」ような非常事態を覆すための「緊急用の奥の手」なのだろうと思います。選挙で負けないための駒としては価値があるのです。

おそらく総裁選が終わった直後に、グズグズで優柔不断の進次郎の重い尻を菅が叩いて、すぐ様に「解散総選挙」となるでしょう。

今回の総裁選の最大の目的は、解散総選挙で自民党が勝てること、菅グループが実権を取り戻すことの2点に集約されます。そのために菅が担ぐ「非常に軽い神輿」として使い勝手がよいのが進次郎です。しかし、有権者・国民もすっかり舐められたものです。

ただし、進次郎自身は超軽量級のアホですから、時間が経つとすぐにボロが出て支持率は下がっていくでしょう。来年25年夏の参院選の前にはどうなっているか分かりません

そうなると、今回の総裁選で2位になった人物が誰だったのかが後々効いてくると思います。2位に高市早苗や小林鷹之が入ったならば、進次郎を降ろしてそちらに神輿を変えようという動きが早いと来年以降には出始めるかもしれません。

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