木下優樹菜さんの命式分析

命式分析例

推命学における基本用語の1つに「用神」(ようじん)と「悪神」(あくしん)があります。

「悪神」とは、命式を傾けたり歪めたりしている元凶となっている悪い作用をしている五行のこと。別の呼び方では「忌神」(いむかみ/きじん)とも言われます。

「用神」とは、その逆で、悪神を抑制したり中和することで、命式の歪みや偏りを整え、正常な均衡状態へと戻す作用をしてくれる「良い五行」(いわゆる吉星)のことです。

本来の四柱推命における鑑定とは、この「悪神と用神」を正確に分類して仕分けることが基礎・基本となります。命式において何が悪神で、何が用神なのか?がさっぱり分かっていないようではまともな鑑定はできません。

木下優樹菜さんの命式における悪神と用神は?

さて前回の記事では、木下優樹菜さんの命式が登場しました。彼女の命式をサンプルにしながら、悪神と用神について考えてみましょう。

悪神と用神がある程度正しく仕分けられるためには、前提として地支論、五行力量論、日干強弱論、通変論、扶抑用神論という少なくともこの5つの基礎理論が先立って分かっていなくてはいけません。(当校のオンライン講座では、この5つの基礎理論を順番に学んでいきます。)

ユッキーナさんの命式は、寒い冬の亥月に生まれた身弱の丁火です。

灯の丁火にとって「水は天敵」です。丁火は水を掛けられることを最も嫌います

だとすれば、壬水=「正官」だから「吉星」です、とはなりません。壬水こそが「最たる悪神」なのです。この時点で、ちまたの四柱推命の通変星占いは全く当たりませんよね。

また、ちまたの泰山流四柱推命では、月支蔵干の通変星を「元命星」「中心星」と言って何かと有り難がります。正官・正財・印綬・食神のいわゆる4吉星が「元命星」になっていると、良い命式だとか言って喜ぶようです。

しかし、この命式は「元命星」=正官ですが、この人にとって「正官」は最たる悪神であり、自分を弱らせ、判断を誤らせ、男性問題で常に苦しませるだけの作用しかしません。


「月支」は用神に成り難い。扶抑用神論が吉凶判断のベース

世の中の80~90%(すなわち大半)の人にとって、命式の月支は「悪神」として作用します。「月支」は、命式が属する季節を定める地支であり、月支の持つ強い影響力によって命式全体の五行バランスが大きく偏り歪められるケースが大半なのです。

(稀に「月支」を用神とせざるを得ないレアな命式もありますが、そのような命式は通常10人に1人もいません。10%未満の希少なケースです)

ということは、月支の星を「用神」と見ましょうなどと言っている阿倍泰山の理論は、根本から甚だしい誤りをしていることになります。月支は「用神」ではなく「悪神」にしかならないのですから。泰山理論はそもそもが誤占のモトなのです。この根底から誤った理論が「正しい推命学の教え」のように延々と再生産され続けて全く糺されない現状に、日本の推命会の闇深さがあります。

「月支=悪神」だと捉えた上で、どうやって月支(悪神)の作用を中和し抑制していこうか?と考えていくのが本来の推命学です。ということは、月支以外に必要な「用神を定める」のが基本なのです。

この命式は、日干の火星が弱く、水星が多くて日干を弱めていますから、扶抑用神法に従って、まずは火星や木星の五行が、弱い日干を助けてくれる「用神の候補」となることが「五行の相生・相剋論」からも分かるでしょう。このように、陰陽五行論に基づいた推察を行うのが本来あるべき四柱推命なのです。10個の通変星や元命星占いにおいて、そもそもこうした五行論や十干がまったく無視されていませんか?

身弱であれば、日干を助ける側の五行を用い、身旺であれば、日干を弱めてバランスを取る側の五行を用いるというのが「扶抑用神法」という一番シンプル・初歩的な用神理論です。初学者はまず最初にこの「扶抑用神論」の視点を、「通変」の事象解釈と絡めながらしっかりマスターして下さい。

扶抑(ふよく)用神論とは、身弱ならば日干を強めるために比劫・印星を、身旺ならば日干を弱めてバランスを取るために食傷・財星・官星を用神とするという簡単な考え方です。

実際には、扶抑用神法により「用神となりうる五行の候補」を幾つかピックアップした後で、十干の細かな特性・季節の特性を踏まえながら、「真の用神」=第1用神そうでない五行=非用神を正しく仕分けることが、丁寧で正確な鑑定のためには必要となります。

「用神」は本人の努力・自己改善の方向性を示すもの

木下優樹菜さんの命式では、詳細は説明しませんが、第一用神(必須の用神)甲・寅卯の木星です。次に必要なのは火星(特に日干を支える役割をもつ地支の巳午未)です。

必須用神(真の用神)である木星(甲&寅卯木)が機能していないところに、火星だけが単体で巡ってきても、必ずしも事象は良くはなりません。おそらくかえって周囲との争いを起こすでしょう。おそらく40才以後の後天運ではそのようになっていくでしょう。今以上に周囲とのトラブルが増加すると思われます。

 この人は20才まで散々な運勢を過ごして、少女時代に相当荒んでいたことが分かります。官星悪神の大過なのですから、早くから男性との付き合いに走り、良からぬ男性にばかり振り回されたり、精神的に依存したり、それが原因で本人のメンタルがおかしくなる。そんな10代を過ごしてきたのでしょう。

 しかし、21才から予期しない形で「甲寅の専旺干支」が後天運で巡ってきたことから、ただの一般人が大ブレイクして人気タレントとして担がれるような幸運にあずかったのです。ただし、前回の記事でも少し書いたように、専旺干支の用神運はある意味で「本人が試される運」でもあります。

 用神の示す方向性で、自分自身が健全に努力したり、自己変革に努めるといったことをしていなければ、自分の思い通りになる幸運が来た!と思い上がって有頂天になって、欲望の赴くままにハメを外して調子に乗っていれば、足を滑らせて思わぬ人生の「落とし穴」に陥るリスクがある危険な運気でもあるのです。ユッキーナや渡部健の命式はその典型的な姿を示すものでしょう。

 命式の中に、用神が2つ以上(日干に隣接し、天地に連なる形で)あるならば、わりと本人が意識して用神の方向で自分を変えていこう=悪神に逆らっていこう、という自覚も芽生えます。

 しかし、命式の中に殆ど用神を持たない人に、たとえ後天運で用神が巡ってきても、その星の作用を自分の内に取り込んで、いわば自分の一部にしようという意識的な努力をしなければ、単に外部からラッキーな運が来て、決まった時期を過ぎると通り過ぎていくだけで、本人には何も残りません。その幸運期が過ぎれば、もとの命式が示す通りの「悪神」の方向に引っ張られ、愚かな言動を行い、破滅へ向かっていきます

 全ての人間は、命式の中に多くある「悪神」の方向性へ歪められ偏向を受けています。何もしなければ、川の上流から下流に押し流されていくように「悪神」が誘引する愚かな言動に無意識に走り、運勢の示す通りの「落とし穴」へと嵌っていくのです。

 つまり「運命の種」「不幸の原因」は外部からやって来るというよりも、そもそも自己内に要因が潜んでいるのです。だとすれば、本当の開運法とは、自分自身のあらかじめ持っている歪み・無意識の偏向を矯正すること、正常な状態に軌道修正することだと分かるはずです。

 では、木下優樹菜さんはどのように「甲・寅卯木の用神」を意識的に使うべきだったのでしょうか?どのような方向性で、健全な自己変革の努力を行うべきだったのでしょうか?これが推命学における「用神活用論」です。

ちまたの「10個の通変星占い」とは異なる、本当の「通変の理論」が分かっていれば、正しい具体的な用神活用法を理解することはそれほど難しくないでしょう。

命式における「悪神」の働き、「用神」の働き、この両者に熟知精通した者だけが、真に効果的な鑑定(改善アドバイス)を行うことができるのです。また鑑定される相談者の側でも、可能であればご自身が推命学を学ぶことで、自分の命式における悪神と用神の作用を詳しく理解されるとなお良いでしょう。

タイトルとURLをコピーしました