最優先に行うべき「家屋の耐震診断&補強」と「大きな家具・家電の固定」ができたら、次にようやく「被災後の生活」に備えるための備蓄を行います。備蓄品のうち最優先なのは命に直結する「飲料水」です。
飲料水備蓄は何日分を想定するべきか?
ちなみに、行政や政府は「1人3Ⅼ×3日分=9Ⅼ」の飲料水備蓄を推奨しています。(1人当たり)2㍑のペットボトル水×4.5本分だけです。果たして本当にこれだけで足りるのでしょうか?
ちなみに、この3㍑はあくまでも「飲料・調理用の水」です。「生活用水」(洗濯等)にはこれ以外にもっと多くの量が必要となるでしょう。
この最低限の推奨量は、3日もすれば給水車が近くにやって来て給水が受けられ、数日後~1週間で上水道が復旧するというような非常に甘い想定に基づいています。
しかし、南海トラフ大地震や首都直下地震といった未経験レベルの「広域大災害」にそんな甘い想定が通用するでしょうか?
南海トラフ大地震では東海~西日本のほぼ全域が被災します。首都直下地震は関東の4県すべて被災します。震度7では老朽化している水道管があちこちで破損します。そうでなくとも、最近すでに平常時に至る所で老朽化した水道管が破裂する事故が日本全国で発生しています。
破裂した水道管の修復に必要な人員や器材が全く足りない中、わずか3日で「給水車」が機能して近所に頻繁に来てくれて、1週間弱で水道が復旧するのでしょうか?
たぶん、危機意識の足りない緊迫感の無い「いい加減な行政指針」をまともに信じて「1人9㍑」しか用意していないと「実際の被災生活ではすぐに詰む」と思います。
「水無し」で人間は何日生きられますか? 答えは3日(72時間)です。
飲料水ゼロの状況で3日経てば人は死にます。行政の指針はこの最低レベルでしかありません。(ちなみに食べなくても水さえあれば2週間ぐらいは生存できます。水の確保が最優先です)
給水車がまったく来ない。水道が2週間以上も復旧しないという状況で、たった3日分の水しか用意していなければどうなるのでしょうか?
備蓄水が尽きた3日目以降どうなりますか?死に直結します。ましてやこの猛暑続きの真夏であればどうでしょうか?必要な水の量はさらに多くなるでしょう。
最低でも2週間分(14日)の飲料水備蓄を行っていないと、実際の広域大災害では死亡リスクが極めて高くなるでしょう。
14日分を備蓄するとなると、1人あたり3㍑×14日=42㍑、2㍑のペットボトル21本分です。
市販の2㍑ペットボトル水は1箱9本入りが多いので2箱=18本あっても3本ほど足りません。4人家族ならば9箱分(81本)は備蓄しておかないとなりません。
1家庭あたりわずか1~2箱の段ボール(ペットボトル飲料水)を買って、それだけで十分に防災備蓄したつもりになっている人がいかに多いでしょうか?実際に必要となる量には遠く及びません。
本当は備蓄品収納部屋を定めて、4人家族であれば「段ボール約10箱分」(=2Lペットボトル90本!!)をまとめてそこに備蓄しないとダメです。
食事・調理に使う用の水と、純粋な飲料用に分けて考えると、1日3㍑のうちの約半分~1/3は「麦茶ペットボトル」(ノンカフェイン飲料を推奨)等に置き換えてもいいと思います。残りは、炊飯などで使う調理用の真水です。
5年以上の保存期間を謳った長期保存水という商品がありますが、別にそれを買わなくとも、一般のミネラルウォーターで構いません。未開封であれば、数年で中の水が飲めなくなることはほぼ皆無です。法律上の賞味期限(保存期限ではない)だけの問題です。
スーパーなどの店舗で買って自宅に重い箱を運ぶのが大変ならば、少しずつAmazon等で注文して家の玄関まで配達してもらえばいいです。毎月3箱ずつ発注すれば3か月で目標の9箱になります。
生活用水をどう確保するのか?
飲料水の備蓄は「生きるか死ぬか」を分かつデッドラインなので、最も優先して行うべきです。しかし、飲料水だけで良いのか?という別の問題があることに気が付くでしょう。
普通の日常生活では、風呂に入ったり、トイレを流したり、洗濯をしたり、膨大な量の生活用水を使っています。その全てを備蓄することは1日300㍑もの水量となりそもそも不可能です。
とすれば、いかに「水を使わない方法」でこれらの日常生活を代替するか?という別の代替法を確立しておかなくてはならないことが分かるでしょうか?
つまり、水をなるべく使わないでトイレ排泄を行い、水をなるべく使わないで炊事&片付けを行い、水をなるべく使わないで体を綺麗にするか、最低限の水量で何日かの1度さっとシャワーを浴びる、何日かに1度だけ最低限の水で簡易洗濯をするぐらいのことしかできない、という想定をしておかないといけません。そのために「必要な用具」は備えているのでしょうか?ここが盲点です。
水を使わないトイレ&炊事調理のために必要なもの
飲料水&食料&生活用水の次に、最優先で用意しておくべき備品は何でしょうか?
それは「水を使わないでトイレをするための用品」です。つまりは凝固消臭剤(消臭剤入りの高分子吸水ポリマー)です。黒いポリ袋と凝固剤さえあれば、水を全く使用しなくても汚物を「消臭しながら固める」ことができます。これによって「水洗トイレを流すための膨大な量の水」が不要となります。
最低でも1人あたり1日5回はトイレをすると想定すると、1カ月分は5回×30日=150回分となります。100回分の凝固剤を2セットほど買っておけば安心です。Amazon等に安いのがあります。
わざわざ高い「携帯トイレ」セットを買わなくても、100円ショップで売ってるアウトドア用チェアを細工すれば簡易トイレが出来上がります。
次に、調理や炊事にかかる用水もなるべく減らしたい。お皿など食器を洗わなくて済むにはどうするか?
お皿にはラップを敷いて食品を乗せる。使い捨ての紙の皿、ポリパック、割りばし等を使う。調理自体も耐熱性のビニール袋(アイラップ)を使う。スプーン等はウエットティッシュで拭き取る。煮炊きに大量の水を使う食品はなるべく備蓄しないなどの対策をしておけばよいでしょう。
そのために必要なラップ類や耐熱性のアイラップなどを備蓄できてますか?備蓄食品もそのまま使える缶詰やレトルト品を中心に備蓄しておけば、煮炊きしたりお皿を水で洗う必要が無くなります。白米やカップ麺はかなりの量の水が調理時に必要です。
とは言っても、どんなに頑張っても必要最低限の生活用水、たとえば洗濯や簡易シャワーする用の水は最終的にどうしても必要となってきます。
一番手軽なのは、お風呂に水道水を張っておければそれに越したことはありません。これで200㍑の水量が確保できます。ただし、地震後の断水してからではこの方法は間に合いません。毎日いつでもお風呂に真水が入っているかどうかは分かりません。
あと水洗トイレのタンク内にも結構な量の水道水(10㍑以上)が残っています。生活用水に限ってであれば転用することは可能でしょう。
10~20㍑入る大きめのポリタンク等に最低50~100㍑ぐらいの水量を平時から貯めておきましょう。中身は普通の水道水で構いません。飲料用ではないので無菌で保存する必要がないです。季節にもよりますが、秋冬春は1~3カ月に1回水を入れ替えるぐらいで十分でしょう。
カビや腐敗を防止するために、夏季は塩化ベンザルコニウム(市販薬)等を微量加えておいて、約1カ月ごとに入れ替える方法でもよいでしょう。洗濯、手洗い、掃除、シャワー等にしか使わない生活用水なので問題ありません。
こうした水タンク等は、後々の被災生活で給水車や応急給水塔(防災井戸)から水をもらってくるためにも必須の容器となります。できれば運搬用の台車や折り畳みカートがあれば良いですね。
上の画像のようなアウトドア用の水栓コックが付いたポリタンクは非常に使い勝手が良いです。できれば持ち運びしやすい5㍑~20㍑サイズ等のいくつかのサイズ別・用途別で用意しておくと最善です。
問題は大量の水を使う「お風呂と洗濯」です。最小の水を使う方法を考えておかないとダメです。
冬・秋・春などの涼しい季節ならば、介護用などの大判ウェットティッシュで体を拭くことで「入浴の代わり」とすることも可能でしょう。しかし、真夏はそれだけだとかなり厳しいと思われます。
アウトドア派の方はよく知っている方法ですが、10~20リットルのポリタンクに電動簡易シャワー(USB充電式)等を投げ入れてシャワーが使用できます。最低水量10㍑あればシャワーを浴びられます。真冬であっても日中に黒いポリ袋にポリタンクごと入れて日向に置いておくことで太陽熱でぬる湯ぐらいにはできます。真夏だと完全にお湯になります。
簡易洗濯方法はすすぎの水が少なくて済むように、泡立ちの少ない重曹を用いるとよいでしょう。手動式のミニ洗濯機&脱水機といったアイテムがあれば重宝するでしょう。
ちなみに、電動シャワー、電動浄水器などを使用するためには、停電時にも対応できるように別途「ポータブル電源」(略称「ポタ電」=家庭用の大型リチウム蓄電池)が必要となります。このポタ電にUSBで繋いで、繰り返し充電する形で運用します。このポタ電についてはまた別の記事で書きます。
水道が1カ月以上復旧しない=補助水源と浄水器が必須
ここまでの備蓄をしておけば「2週間ぐらいの完全断水」にも対応できるでしょう。しかし、最悪1カ月以上も水道が復旧しない=給水自体が無いとなると、サバイバル度は急激に上がってきます。
裏山に湧き水が出ている、古い井戸が使える、大きなコンテナ容器で雨水を貯水できる、近くの河川から水を汲んでこれるといった補助水源がないと全ての水が枯渇するかもしれません。
さらに、それらの補助水源の水は浄水しないと危険です。少なくとも飲料用には使えません。飲料用に転用したいならば、簡易(携帯)浄水器もしくは電動浄水器が必要となります。
そもそも東京や大阪といった大都会の真ん中では補助水源などありません。雨水を貯められるような大型容器をそもそも各家庭で持っていないだろうし、あったとて都心のマンション・アパートのどこにそれを設置するのでしょうか?
大都市圏では断水が2週間を超えると深刻な水問題が発生するでしょう。基本的に大都市部(いわゆるコンクリートジャングル)でライフラインや物流網が1カ月以上停止すれば、個人での在宅避難は上記の備蓄を十分していたとしても約2週間が限界だろうと思います。
それ以上の期間になれば、地方都市へ疎開するか、避難所に行くしかないですが、大都市部の避難所は定員オーバーと備蓄品不足になって機能していないと思います。
たとえば、東京都の場合は、東京都の全人口に対して各避難所で収容可能な最大員数は20%未満です。残りの8割の人々は避難所に行っても入れません。備蓄物資もすぐになくなるでしょう。地方へ疎開するにしても足も無いのにどうやって移動するのか?ということを予め想定しておくべきです。