あなたの家、倒壊しますよ

防災情報

25年大津波説、首都直下地震、南海トラフ大地震+富士山噴火といった数百年に1度やって来るか来ないかというレベルの広域大災害がすぐ間近に迫っているという現実認識(危機感・切迫感)をまず持って頂くことが1つ目の課題ですが、その次には「適切な備え」をどれだけ実行しておくか?が重要です。

1番最初に考慮すべきこと=「住居・地盤の耐震性」

「生死」に関わる事項、1番最初に手を打って置かないとならないことは、食料や水の備蓄でも、ましてや市販の防災バッグの購入でもありません。

4000円ぐらいの市販の防災バッグ(役に立たない中身)を買って、これでもう防災対策は終わり!とか思っている人が一番危険です。

住んでいる家(建物と地盤)の安全性がそもそもどうなのか?のチェックが最優先です。

「防災」は大きく2つのフェーズで必要な対策が違ってきます。

1つ目が「被災したその瞬間」「地震が来たその瞬間」(発災時)にどう備えるか?です。地震で亡くなる人の大半はこのタイミングで即死するか、重傷を負ってそれが原因で亡くなります。

2つ目のフェーズが「避難生活をどう暮らすか」(避難時)です。多くの人は、防災と聞いて、だいたい2つ目の「避難生活に必要なモノ」ばかりを準備します。もっと大事な対策を忘れていませんか?

いざ地震が来て、倒れた食器棚や大型タンスの下敷きになりました。木造家屋が全壊して圧死しました。その時点で即死アウトです。そうなれば次のフェーズの避難生活なんかありません。

最優先すべきは、大きな家具や倒壊した家自体に潰されて圧死しないこと、大怪我を負わないこと、火災に巻き込まれないこと、この3つの死亡リスクをいかに低減するか?に尽きるのです。

また、発災時にどの場所に居るか?は予測のしようがありません。運良く帰宅して「家にいる時」ならばよいですが、職場にいる時かもしれないし、電車移動中かもしれないし、車で外出中かもしれません。1日のうち居る時間が長ければ長いほど、その場所で被災する可能性は高いわけですから、その場所の防災対策をしっかりしておくべきです。

おそらく大半の人は、睡眠時を含めて自宅にいる時間が1日の約半分ぐらいは占めるでしょうから、最優先に「自宅」の耐震性をチェックすべきです。職場のあるビルの耐震性や備蓄品等については個人でできることに限界があります。

あなたの住んでいる住居が、木造住宅(軽量鉄骨アパート含む)なのか、鉄筋コンクリートのマンションなのか、その建築申請年度はいつなのか?

また建っている「地盤」沖積層などの「揺れやすく緩い土地」なのか、台地などの揺れにくい強い地盤なのか、液状化や地滑りの可能性はあるのか?この「建物自体の耐震性」×「土地の耐震性」の掛け算で倒壊リスクが判明します。

おそらく各自治体が「家屋の耐震性診断」をやっているでしょう。市から委託されている専門の建築士・防災士が「建物×地盤の耐震強度」を診断してくれますのでご活用ください。

まず、建物が何年に建築申請されたか?(建築完了年月ではありません)によって、旧耐震基準で建てられたのか、新耐震基準で建てられたのか?が分かります。

1981年6月以前「旧耐震基準」に従って建築申請された家は、おそらく震度6弱以上の揺れがくれば倒壊する可能性大です。

その家に住み続ける以上、家が倒壊して下敷き(圧死・即死)にならないという安全の保証はできません。首都直下地震や南海トラフ大地震が来れば一瞬で(能登半島地震の映像でも見たように)全壊する可能性があります。

旧耐震基準の家屋(およそ築40年以上)に住んでいる場合、できる対策は限られています。自治体の指針に沿って、耐震診断をして、行政からわずかの補助金をもらって、膨大な費用が掛かる耐震補強工事をする他ありません。

壁板・筋交い・補強柱を入れて補強、土台や接合部の強化などを行いますが、どんなに安く見積もっても500万~1500万円は最低掛かる耐震補強工事になります。であるならば、いっそ現住居を取り壊して新築・賃貸等に移住するほうがよいのでは?という話にもなってくるでしょう。

耐震基準は3段階に分かれていて、阪神淡路大震災を踏まえて2000年に改定された新耐震基準(建築基準法)が最も安全性が高い基準です。震度6強でも倒壊しない前提・設計で建てられています。なので、築年数が20年以内の低層マンションや木造住宅&アパートであれば、そこそこの耐震性があるほうでしょう。

ただし、建物が建っている地盤が非常に緩い地盤であれば意味がありません。地盤が緩くて液状化地滑りすれば、上物がしっかりしていても家自体が傾いて住めなくなります。

その場合は、自宅での避難生活(在宅避難)ができなくなり、不便極まりない避難所生活がスタートします。

ちなみに、10階以上あるような高層マンションやタワマンはむしろハイリスクです。

よほど特殊な免震構造や制震構造が多用されていない限りは、地上40m以上の高層階の揺れは地上の数倍になり、長周期振動の揺れが非常に長く続きます。まさに屋内は地獄絵図になる可能性が高いです。それこそ冷蔵庫や電子レンジといった重量物が長い時間飛び回って凶器となります。

地震対策パーフェクトガイド!最重要・建物と室内の安全対策|死なないための防災対策・命を守る環境づくり3つのポイント[第2話]

しかも、水道・電気・ガスなどライフラインが寸断された後どうやって暮らすつもりなのでしょうか?エレベーターが動かない中、10階以上にどうやって水や物資を運ぶつもりですか?さらにタワマンの高層階で火災が発生したらどうなりますか?

阪神淡路や東日本大震災の被害を見ていながら、沿岸エリアのタワマン購入者が絶えない様子を見るに、人間とはつくづく学ばない生き物であるなと思わされます。

一番安全性が高いのは、揺れにくい硬い台地上の地盤に建っている2001年(新・建築基準法)以降に建築された低層住居です。震度6強でも1度の地震で倒壊するリスクは低いです。

山に近づきすぎると今度は「土砂崩れ」のリスクが高まります。お住まいの地域のハザードマップ等をよく見て、地盤の安全度を見極めてください。

大きな家具(タンスや食器棚)を固定できていますか?

住んでいる家屋と土地の耐震性がクリアできたら、次に行うべきことは、屋内の大きな家具の固定です。水や食料等の備蓄よりも家具固定の方が先です。優先順位を間違えていませんか?

寝室やリビングなど人が居る時間が長い部屋「大きな家具」をまず置かないことが原則です。

昔ながらの衣装ダンスや背の高い食器棚、本棚などは倒れてきて凶器となります。できるならば、プラスチック・樹脂製でできた軽くて背の低い収容ラック等に入れ替えるべきでしょう。

他にも、ピアノ冷蔵庫、電子レンジなども倒れてきたり、あるいは最悪飛んできます。それらはどうやって固定されていますか?

一番良いのは固定するよりも処分することです。この際に断捨離して下さい。無ければそもそも倒れてくる心配もないのです。そのピアノや衣装ダンス、本当に必要ですか?

寝ている無防備なところに、タンスや本棚などの大型家具や重量物が降って倒れてくる配置になっていれば、圧死率、即死率は跳ね上がってきます。寝室に背の高い家具は置くべきではありません家の中で一番安全ゾーンにしておかなくてはならない部屋「寝室」です。

それに対して、おそらく家の中で最も危険ゾーンなのがキッチン(台所)です

冷蔵庫、電子レンジ等、大きな鍋や調理器具等の重量物が多く包丁ナイフや割れた食器がどこに飛んでいくか分からない。地震発生時に真っ先に離れるべき場所がキッチンです。

最近のガスコンロ等は揺れを検知して自動的に停止するようになっています。「地震が来たらまず火を止める」は古すぎる防災知識です。

どこでもいいってわけじゃない 一級建築士に聞く「家具固定」のポイントとは?【こつこつ防災】

家具固定の仕方によっては実際にどれだけの効果があるかが微妙です。

L字金具による固定、突っ張りポール等による固定も、接地する壁地や天井面の強度が足りないとすぐにネジが抜けて倒れてきます。

素人判断で固定したからと言って100%安心ではない以上、倒れてきて怪我をする危険性が少ない位置、ドアや階段などの動線を塞がない位置に置くという、そもそもの「配置」の時点で注意すべきです。

突っ張りポール型の固定器具は、家具と天井までの距離が40㎝を超えるとあまり効果がありません。粘着性の制震ダンパー的な器具のほうがベターでしょう。

窓ガラスの飛散による怪我を防ぐ

次に、窓ガラスが飛散しないかをチェックします。厚手のカーテン&レースなど二重カーテンが掛かっている窓は、最悪割れても室内にガラス破片があちこち飛び散る可能性は少ないでしょう。

問題はカーテンも何もなく、廊下や階段などで剥き出しになっている窓ガラスです。

それらが地震で粉々に割れた時に破片はどこに落ちてくるのでしょうか?その上を裸足やスリッパで歩くとどうなりますか?窓ガラスだけでなく、姿見などの鏡、ガラス扉も同じです。対処がしにくい場所にある窓ガラスには、あらかじめ透明の飛散防止フィルム等を貼っておけば済みます。

また、少なくともどこかの窓ガラスは割れることを想定しておいて、空いた穴を塞ぐための資材を何らか用意しておかないと、真冬や真夏だとその後の自宅避難生活にも支障をきたすでしょう。

家具転倒防止器具設置の落とし穴

以上のような家具固定やガラス対策をしつつ、必ず寝室には災害時に必要となる防災グッズを起きてすぐ取り出せるところにスタンバイしておきなさいというのが鉄則です。

救援ホイッスル、照明(ライト)、スニーカー等(厚底スリッパ)の3つが必須グッズです。(100円ショップでも入手できます)

倒壊リスクの大きな家屋では頭部を守るヘルメット等も必須かもしれません。寝室から玄関に行くまでに、ガラス破片や散乱した物で足を怪我したら、すぐに避難困難者になります。だから寝室にもスニーカー等を置いておけと言われています。

以上の備えを、水や食料などの「避難生活で必要になる物資」を備えるより前にすべきです。

家屋倒壊や家具圧死で発災直後に死んでしまったらその後の避難生活も何もありません。ただの無意味な備蓄品になります。

この記事をご覧になられて、減災努力をされて、1人でも生存率が向上することを祈ります。大災害は皆がすっかり忘れた頃に、油断している時に不意打ちの形でやって来ます。すでに大勢が意識し始めている2025年7月には起こらない可能性が高いと思います。そこから半年から数カ月前後にズレた形で発生するのではないかと私は想定しています。

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