11月になって(もう立冬11/7だと言うのに)ようやく「秋らしい気温」に下がってきました。温暖化がさらに進んでいけば、5~10月の1年の半分以上は「夏」になっていくのかもしれませんね。
五行と身体の相関性について
夏は火星が旺じて、秋には金星の気が旺じる季節です、というのは五行理論の最初に習う内容ですが、五行と季節の巡行、五行と私たちの身体機能の間には深い関連性があります。
木火土金水の五行にはそれぞれ関わりが深い身体の器官や臓器があります。
秋に旺じる金星は「肺・小腸・骨歯」などを管轄しています。
では、なぜ金の五行が「肺や腸」と結びつきが深いのでしょうか?受講生の皆さんは当然お分かりですよね?
この内容はオンライン講座の1番最初の授業でお伝えしている内容なのですが、受講生の皆さんがなかなかこの理由まできちんと覚えていてくれないのが悩みです(笑) というわけで、ブログ記事でも書いておきますのでよくよく理解しておいてください。
五つの徳性と五行の割り当て
その前に、五行と「五常」(五徳)についての理解が鍵となります。
「五常」とは儒教の考え方で、人間が備えるべき代表的な「5つの徳性」のことを指します。「仁・義・礼・智・信」の5つの徳目です。
そう言えば、最近映画で「八犬伝」が公開されていて観に行きたいなと思っていたのですが、すでにご覧になられた方はおられるでしょうか。
江戸時代に怪奇小説家・滝沢馬琴が創作した「南総里見八犬伝」では「8つの徳目が刻まれた宝玉」が死んだ伏姫の体から各地に飛び散って・・という下りでお話が始まります。
「仁義礼智信」の5つに加えて「忠孝悌」の3つがプラスされています。「孝悌」は親子兄弟間のあり方に関するものでいわゆる親孝行、兄弟思いのことですね。
昭和世代の方々にとっては80年代に公開された主演:真田広之&薬師丸ひろ子の「里見八犬伝」の方が思い出深い名作かもしれませんね。
さて、これら人間の持っている特性(気質)と五行に関連性があるということで、
木星が「仁」、火星が「礼」、土星が「信」、金星が「義」、水星が「智」を司っているというのが五行論の前提となります。
ざっくり言うと、「仁」とは慈愛・博愛・思いやり、「義」とは「善悪を峻別・判断する能力」です。
例えば、甲乙木の人は「中庸な良い命式」であれば、「仁」=「慈愛や思いやりの精神が発揮されて人情深い人」になり、壬癸水の人は「智」=「博識で思慮深い人」になる、というわけです。
さてお話は元に戻りますが、なぜ秋を支配する「金星」の管轄する身体器官が「肺や腸」なのでしょうか?
金が「義」の気質を管轄することから類推していけば分かりやすいでしょう。「義」というのは、善いことと悪いことを峻別・識別・判断して分離する気質です。
これが身体機能として働いたならば、体の内外において「善いもの=必要な要素」は取り入れるが、「悪いもの=不要な要素」は排斥してブロックするという選択機能や免疫機能として現れます。
つまり、身体器官の中でも「裁判官」のように要・不要をジャッジしている器官に関連性が深いのです。
「肺」は酸素を取り入れ、二酸化炭素を体外に排出します。
「腸」は栄養を吸収するが、不要なものは体外へ排出します。
最新の医学でも人間の免疫機能の大半は「腸」に依存している。
腸の機能が免疫機能の活性化と深く関連していることが分かってきました。「腸活」というワードをよく耳にするでしょう。
「衛気」を充実させれば風邪を引かない
「肺」の働きの1つに「衛気」(えき)を全身に張り巡らせるという機能があります。
東洋医学では人体を流れる「気」を4つ(元気・宗気・営気・衛気)に分類します。そのうち「衛気」というのは悪い外的要因(外邪)をブロックするバリア機能を持った気です。
この衛気が充実している人は、外的な悪い要因(熱邪・湿邪・寒邪・風邪など)が内側に入り込んでこないため、外的要因によって体調が乱されることが少なくなります。
しかし、肺の機能が弱って衛気のバリア機能が弱ければ、外邪が簡単に内側に侵入してきて体調を崩すことになります。
この季節、急に寒くなって冷たい北風が強くなると、身体にとってはそれが「外邪」=風邪(ふうじゃ)や寒邪となります。日本語の風邪(カゼ)の由来は、この「風邪ふうじゃ」でしょう。
衛気が充実しれば、外邪の侵入や攪乱をブロックするので簡単にはカゼには掛からないのですが、衛気を作り出すパワーが足りてない方はすぐにカゼを引いてしまいます。
東洋医学や漢方医学は「体質改善論」「バランス調整論」ですから、弱っている器官を扶助して補い、強すぎる器官のガス抜きをして調整を図る、という基本思想によって薬剤(生薬)を処方します。
この視点は、四柱推命における「身旺と身弱」や「扶抑用神」の考え方とも共通しています。このように、同じ五行論をベースとしているので、四柱推命と東洋医学は非常に似たロジックを持っています。
肺の衛気機能が弱っているという体質的な欠陥があるなら、肺の機能や衛気を強める生薬を配合した漢方薬を処方するわけですね。例えば、その代表的なものが「玉屏風散」と呼ばれる処方です。別名「衛益顆粒」で市販されています。
ただし、全ての漢方薬は「体質改善薬」ですから、同じような症状があったとしても、その個人の体質(証)によって用いるべき薬剤が全く異なります。
「カゼ」1つをとっても全員が「葛根湯」を飲めばいいわけではないのです。「葛根湯」は比較的体力・気力が充実している体質(実証)の人向けの処方であって、誰にでも用いるものではない、ということを日本人の大半が知りません。
自分がどのような体質傾向があり、どの器官に弱さがあるのか、それに応じてどのような体質改善薬を用いるべきなのかは漢方(東洋医学)専門医に診断してもらわないと素人判断では分かりません。
関心がある方は、お近くの「漢方外来」に行かれてみてはいかがでしょうか。漢方外来で診察を受けて処方箋をもらえば、健康保険が適用されますので比較的安価に漢方薬の処方を受けられます。