スピリチュアリズムとは?その歴史

スピリチュアル理論

新しい記事カテゴリー(スピリチュアル理論)を創設しました。近代~現代のスピリチュアル理論について、私なりの見解を纏めて書いていこうと思います。

スピリチュアリズムは「心霊主義」とも訳されますが、19世紀のイギリスから広がっていった「霊的な世界」をできるだけ科学的な視点から客観的に解明しようとする心霊研究運動のことを広く指しています。

しかし、実際にはスピリチュアリズムという一言ではそう簡単にカテゴライズできないほど、いわゆる「スピ系」と呼ばれるものの中身は「多種多様かつ雑多」です。必ずしも内容的な一貫性があるものではありません。

霊的なもの、目に見えない不思議な力に関連することは、内容に関わらずとりあえず「スピリチュアル」として一括りに言われています。実際には扱われている中身は(特に日本の場合は)バラバラで雑多です。

最初はポルターガイスト現象の研究から始まった

日本で多く見られる「何でもスピ系」(内容の一貫性が無い雑多なアレ)ではなく、本家本元というか欧米圏における近現代スピリチュアリズムの歴史と展開を簡単におさらいしてみましょう。

1848年にアメリカ・ニューヨーク州ハイズヴィルのある家で、ポルターガイスト(騒霊現象)事件が起きました。

フォックス一家がこの家に越してきてからというもの、激しいラップ(叩音)現象に悩まされました。このフォックス家の幽霊騒動は当時のマスコミにも一大事件として扱われました。

ある日、フォックス家の娘のひとりケイトが「もし、この騒動が幽霊の仕業であるなら、私の問いに答えて」と手を叩いてみせました。すると、驚いたことに手を叩いた数と同じ数のラップを返してきたのです。

その反応に驚いた家族は、アルファベットを綴ったボード(このアイデアが後に交霊用のウイジャボードになった)で、霊との交信を試みたのでした。すると「自分は5年前にこの家に住んでいた者に殺されたチャールズ・ロスナーという名の行商人である」と告げてきたのです。

そして、自分自身がどのように殺されたのかなど細かに語り「この家の地下に埋められている」とも伝えてきたのでした。この交信をもとに調査した結果、この家の地下からは人骨と毛髪そして行商人の鞄が発見されました。

それまで起きた心霊現象のほとんどが、18世紀北欧の霊能者スウェーデンボルグ霊界探訪日記を代表とするような「霊媒本人だけが知覚できる心霊現象」主観的・精神レベルの心霊現象が中心であったのに対して、

このハイズヴィル事件の重要性は、ポルターガイスト現象という「物理的かつ客観的な心霊現象」という第三者が知覚しうる現象であったこと、歴史上初めて霊との交信を客観的に示したエポック・メーキングな出来事であった点において、欧米圏全体に大きなインパクトを与えました。

ちなみに、日本で最近話題になっている「三軒茶屋のポルターガイスト」は、もしかすると日本版のハイズヴィル事件なのかもしれません。日本での心霊研究はまだまだ始まったばかりです。

イギリスを中心に進められた心霊研究

その後、イギリスを中心として「心霊現象の研究」が盛んに行われるようになり、ケンブリッジ大学関係者により (The Society for Psychical Research) 心霊研究協会が設立されました。

研究者の中には、イギリスの首相アーサー・バルフォア、タリウム元素を発見した物理学者サー・ウィリアム・クルックス、フローレンス・クックの交霊実験、エクトプラズム※による完璧な物質化現象

(※ギリシア語のecto(外の)とplasm(物質)を組み合わせて「エクトプラズム」という新語をつくりだした)

物理学者オリバー・ロッジ卿、ノーベル賞受賞生理学者シャルル・リシェ、推理小説家として日本でも有名なアーサー・コナン・ドイルなど、著名な学識人が次々と名を連ねていました。こうした心霊現象研究に関わった学者の中に、研究を進めているうちに、霊魂の実在を確信する人たちが続出したのです。

「死後の世界があるということが紛れもない事実であると確信するならば、これまでの常識が覆されることになる。ならば霊的な真理を熟知した上で、霊的な真理に倣った生き方をすべきである」という精神運動を指してスピリチュアリズム(Spiritualism)というようになりました。

現代スピリチュアリズムの5つの展開軸

私が思うに、広範囲に及ぶスピリチュアリズムの世界は大きく4~5つの時代・系統・ジャンルに分けることができます。歴史的にも19世紀から21世紀にかけて、これらが別々に展開してきています。

1, 物理的心霊現象の時代
1848年のスピリチュアリズムの原点では、物理的な心霊現象を主たる研究対象とした時代であり、ラップ現象、ポルターガイスト、エクトプラズム化などの「物理的な心霊現象」の調査が中心でした。


2, 精神的心霊現象の時代

つづいて、霊媒師や霊能者が知覚できる精神的な心霊現象に焦点を当てる時代へ移り行き、サイキックを用いた犯罪捜査から透視や予知予言などの霊的能力を実証するための研究が行われました。

3, ヒーリングの時代
ハリー・エドワーズなどを代表とする、病気などの癒しを目的とした霊媒が注目を集め活躍しました。米国の有名な超能力者エドガー・ケイシーも霊的なパワーによるヒーリング遠隔治癒を得意としていました。この路線は現代ではレイキ・ヒーリングなどとして追求されています。

4, 霊訓の時代
世界中に様々な「霊界通信」(高次元の霊が選ばれた霊媒師にメッセージを伝えるチャネリング現象)が地上に示されるようになり、死後の世界=霊界の姿を知らしめ、霊的な真理を伝え、「霊的な真理に則った正しい生き方」を啓蒙しようという霊的真理の学びを中心テーマに掲げる運動が主体となっていきました。

その中でも代表的な霊訓が「シルバー・バーチ」という高次元霊によって伝えられた一連の霊界通信であり、他にはフランスで記されたカルデックの霊界通信なども有名です。世界中で様々な形で霊界通信が示されました。

あまり知られていませんが、幕末明治~大正・昭和初期の日本でも、浅野和三郎などを中心とした霊界通信の試みがなされています。古神道の開祖である平田篤胤はいわゆる日本版スピリチュアリズムの開祖とも呼べる内容を研究していました。

この頃になると、初期のような雑多な物理的心霊現象にいたずらに興味を向けるよりも、霊界通信を通して開示された「世界観や人生論」の学びに注目が集まるようになりました。このことをスピリチュアリズム運動の成熟化と呼ぶ人もいます。

一連のスピリチュアリズム運動の本当の最終目的はここにあると言ってよいでしょう。1~3の目に見える現象の記録や調査というものは、霊魂の存在や霊界の存在を客観的に立証しつつ、4の裏付け・土台となるものだと言えます。

1840年代から始まった一連の現代スピリチュアリズム運動に先がけること約100年ほど前に、北欧の学者兼霊能者であったスウェーデンボルグの膨大な霊界探査日誌がありました。これも「4.霊訓」に相当する内容を扱うものです。

近現代スピリチュアリズムの本当の起源を遡るならば、このスウェーデンボルグから出発していると言ってもよいのではないかと思います。やがて100年後に本格的に訪れる心霊主義運動の口火を切った人物です。

5, 宇宙の時代
UFO目撃の頻発、宇宙時代の幕開けが近づいた20世紀の後半から、スピリチュアリズムの舞台は「宇宙人」「UFO」にまで急速に広がっていきました。

人類はどこから来たのか、宇宙人と人類の歴史的関わり、宇宙人と霊界科学、次元理論といった分野にまでスピリチュアリズムの研究が裾野の展開を広げています。

いずれ遠くない将来に、宇宙科学と心霊研究はコインの裏表のように一体的に理解されるようになるのではないでしょうか。(実は18世紀のスウェーデンボルグは「異星人の存在」についても言及しています。20世紀になってUFO目撃が起こる150年も前にです。恐るべき予見力です。)

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