十干の作用は記述不可能?

四柱推命の基礎理論

ひさしぶりに推命学の記事も書いておきましょう。今回は十干論についての補足です。

十干は10種類ですから、十干×十干の組み合わせは当然100通りあります。

甲木を例に挙げると、甲×丙の組み合わせ、甲×庚の組み合わせなど、甲だけでも10通りが存在します。

オンライン講座の基礎理論クラスでは、講座の中盤ぐらいに「通変の理論」をお教えしています。

比劫、食傷、財星、官星、印星の「5種類の通変」の作用(事象)とその吉凶について、命式ごとにどのように見分けていくかということの「基本中の基本」をそこでお伝えしているわけですが、

この基礎クラスの前半部分では「十干ごとの性質の細かな違い」までは教えていません。先にそこから入るとかえって混乱するからです。

まずは、十干の違いに関係なく全十干に共通に当てはまる内容」(=6~7割は当てはまる共通要素)から先に教えています。

身弱の場合に(十干に関係なく)「官星」はどういう作用になりやすいのか?

身旺の場合に(十干に関係なく)「印星」はどういう作用になりやすいのか?

こうした内容は「共通要素」(通変論)として最初に教えるべき内容だからです。

十干ごとの細かな違いをお伝えするのは、基礎編では後半~終盤に掛けて、さらに深く個別に1つ1つ分け入って詳細に説明するのは上級理論クラス以降となります。

十干同士の関係論にはいろいろあれど・・

さて、同じ「通変」だったとしても、実際にはこの十干同士の組み合わせによっては少しずつその作用が違ってきます。

例えば、甲×丙 と 丙×戊の「食傷」庚×丁と丁×壬の「官星」など、同じ食傷や官星といった通変に相当しますが、その働きと良し悪しは全く違ってきます。

こうした十干同士の相互関係について、いろんな占い師がいろんな書籍(↑↓など)であれこれと論じているようです。

いろんな推命家が各々独自の十干関係論を解説しているようです。上などもその一例です。

しかし、少なくとも私は文字で書かれた書籍上で「これが決定打」と思えるような内容の「十干関係論の解説」を今まで一度も見たことがありません。だいたいいい加減な(中途半端な)内容ばかりですし、詳しく解説されている文章は皆無でしょう。

なぜか?と言うと、後で理由を詳しく述べますが、結論から言って、十干の相互関係について微に入り細を穿つ如くに文章で詳細完全に説明しきることは至難の業です。ましてや「ほんの数行程度の文章」なんかではまともな説明となるわけもないのです。

奇門遁甲における十干の関係論

また占術によっては、同じような十干の相互関係でも解釈が違ってきます。有名なところでは方位占の王様である奇門遁甲がそうでしょう。

奇門遁甲では、天盤の十干地盤の十干の組み合わせによって事象や吉凶を補助的に判断します。

例えば、天盤が丙火、地盤が甲木(実際には六儀に隠されていますが)の組み合わせ(丙‐甲)を「飛鳥蹄穴」(ひちょうてっけつ)と呼んでいます。これは強力な財運向上を引き起こす十干関係だ、と奇門遁甲では解釈するようです。

香港の占い師サイトから拝借しました↑ この盤では、南方位が 生門・直符で、天地干が「飛鳥蹄穴」=丙×甲(甲は戊に隠れている)の好条件が重なる吉方位となっています。

奇門遁甲の場合、複数の要素が絡むのでその吉凶判断は単純ではありませんが、

「八門」が 生門・休門・開門・景門の吉門があり、

「八神」に 直符・九天・九地・六合・太陰の吉神があり、

そこに加えて「天盤と地盤」の十干関係が良好な方位を<明確な吉方位>とします。

奇門遁甲の吉格局
奇門遁甲を活用する際に作成する遁甲盤では、格局という概念が非常に重要になっていきます。構成する要素の組み合わせにより、この格局が形成され、吉意が増すことや凶意が増すことがあります。この格局を重視して、奇門遁甲の遁甲盤を利用するのが基本的な奇門遁甲の活用法になります。

さらに、天干×地干八門の特定の組み合わせによっては「九遁」と呼ばれる「格局」が定められています。

私が好んで利用しているのは、飛鳥蹄穴でも青龍返首でもなく、意外と地味に思える「天遁」「人遁」といった格局になります。(「人遁」は 天干=丁、八門が休門、八神が太陰となる組み合わせです。休暇旅行先には最適ですね)

と余談になりましたが、同じ東洋占でも占術によっては、十干×十干の組み合わせの意味・解釈はまったく違ってきますよということです。

ちまたに流布する十干関係論の落とし穴

いろんな推命家がいろんな書籍で十干関係論を展開しているわけですが、私が見るに総じて「同じような勘違い」があるようです。大きく3つの論点で???な内容が多いのです。

(1)十干A×十干Bの作用は常に同じではありません

まず、いろんな書籍を見ていて最初に思う疑問がこれです。

ほとんどの十干関係論は、十干A×十干Bの相互作用を「単純な〇×表」にしてしまっています

典型的なところでは、庚×丁の関係は常に非常に素晴らしい十干関係です。常に◎(大吉)ですといった感じのことが書かれていないでしょうか?

あらかじめ特定の十干関係を最初から「吉」とか「凶」とか決め打ちしているのです。これではちまたに流布している「通変星・元命星占い」の思考法と何も変わりません。

甲×丙は〇、丁×甲は〇、辛×壬は〇といった形に「常にこれは◎です」といった単純な〇×で説明していないでしょうか。少なくとも私が見る限りでは、ある時には◎ですが、こういう場合には×ですというふうに「丁寧な場合分け」でもって詳細な説明をしているものはほぼ皆無だと思います。

(2)「常に吉作用◎」となる十干関係は存在しません

結論から言って、いつでも「常に吉作用◎」という十干関係の組み合わせは存在しません。(残念ながら、いつでも××凶作用になる関係の方はちゃっかり存在していますが)

例えば、「甲×丙」を例に挙げると、甲×丙が「◎吉作用」となりやすいのは、冬~春月までの特定の季節に限られますし、他にも「特定の諸条件」が揃っている場合に限られます。(実はそれだけ「狭き門」なのです)

一方で、同じ「甲×丙」が夏~秋の季節にあればほぼ全てのケースで凶(×や▲)となるでしょう。

上はほんの1例に過ぎませんが、常に吉作用◎と言える十干関係はこの世に存在していません

それを理解せずに、辛×壬は常に◎です、庚×丁は常に◎ですとか言っています。それは明らかに間違いです

例えば、辛にとっては壬水が凶作用にもなります。庚にとっては丁火が凶作用になりえます。それらの関係性は常に吉◎なのではありません。こうした「場合分け思考」ができない推命家がちまたには非常に多いのです。

(3)あらゆるパターンを詳解しきるのは文章ではまず不可能

大まかに整理すると、十干同士の相互作用は 以下の3パターンの類型のいずれかに分かれます。

① ある時には◎吉作用となりえるが、それ以外は×▲(凶作用)になる関係

② いつでも××(大凶)にしかならない関係

いつでも △ 毒にも薬にもならない=大した作用をしない無効な関係

先ほどの例でいえば、甲×丙や庚×丁は、上の①パターンになるでしょう。

そして、この①のタイプの十干関係論を、微に入り細を穿つような丁寧な解説を試みるならば、同じ1つの甲×丙の関係について、延々と数ページを費やして、春夏秋冬・身旺身弱と多種多様なパターンにおいて場合分けをしないと本当の丁寧な解説文にはなりません。その全体像を「わずか数行」ごときで書き切れるはずがありません。

これが「十干の相互関係」について丁寧に解説し尽くしているような書籍がこの世には存在していませんと断言している理由です。今後もそういった書籍が登場することはないでしょう。要するに書き切ることが至難の業だからです。

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